⑭マグロオヤジ

マグロオヤジ

東京の深川にある回転すし屋での出来事です。ここは所謂フランチャイズではなく個人で経営しているような小規模な店だと記憶しています。ある日私は仕事の途中でこの店で昼食をとっていた時の事です。その時、「ガラッ」と勢いよく入口のドアを開けて50台半ばのおやじが入ってきました。彼は椅子に座るや否や「お兄さん!今日はいいマグロが入っているかい?」と店中に響き渡るような大声でお兄さんに謎のネタ確認が入りました。オッサンの人目を憚らない自信満々の態度に圧倒されたのか、お兄さんは「あ、入っています」と、これまた下町のすし屋にあるまじき気風のかけらも無い小声での応答でした。その時私は思った。ちょっと、ここは回転寿司だぜ 銀座の高級店じゃぁないんだよ!そもそも回転ずしやに良いマグロってあるの?と。それに、お兄さんは江戸っ子じゃぁないの?寿司屋なのだからオッサンに負けないくらいの勢いが必要だろうよ!とも思った。もう、この状況だけでも滑稽で私は十分笑えます。ところが、その時突然、オッサンの機関銃のごときオーダーが炸裂。「まぐろ」「あ、まぐろ」「まぐろ! マ~グロ!」「マグロー」オッサン、どんだけマグロが好きなんだい?あんたのオーダーでお店のマグロが無くなるっちゅーの!俺が食うマグロが無くなるっちゅーの!それに、食うのがバカ速いちゅーの!その時は絶対にお兄さんも私と同じことを思っていたに違いないのだが、それでも言われるがままに、ひたすらマグロを供給し続けるお兄さん。この光景が私の笑いのつぼにピッタリとはまってしまい、もう食べるどころではありません。私は腹がよじれるほどの笑いを必死にこらえながら店を出るのが精一杯でした。世の中にはいろんな人が居るけれどオッサン本人はいたって本気だから余計に面白いね。これは30年前の話だけれど、この店が今もあったら是非行ってみたいね。

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