㉞やっと田舎に帰れる その一

やっと田舎に帰れる その一

約30年前の話です。

1995年。私が福島から東京に転勤してから、はやいものでもう10年が経とうとしていました。この時期は、バブルが崩壊してから数年後にあたりますが、倒産を回避するために、よりコストダウンが図れる独立採算制にシフトする企業が多くなりました。当然私の会社も事業部制から独立採算制へとシフトすると言う噂が実しやかに流れていました。そうなると、どうなるか?東京に居れば東京の事業部に固定となるため、福島には帰れなくなると言う事なのです。この時期の私は、体調も悪く、少し精神的にも疲れが出ていた時期でしたが、この情報は自分にとっては人生を左右する大きな問題です。田舎に帰れないまま東京に骨をうずめるのか、それともある決断をするのかの2者択一を決めなければなりません。これが、私には大きなプレッシャーになっていました。

因みに、この時期は地下鉄サリン事件があり、残念なことに私の担当のお客様も事件に巻き込まれてお亡くなりになりました。まだまだお若い女性です。また、当時、通勤に丸ノ内線を利用していた私は、丸ノ内線構内でサリン事件が有った時、丁度フレックスタイムの時間差出勤だったため、この事件に巻き込まれないで済みました。もし、通常出勤だったら私も被害を受けて死んでいたかもしれません。こんなに恐ろしい事ってありますか?

東京は非常に便利で楽しいけれど、逆に、このようなリスクもあるのだと言いう事を私はこの時期、痛感していました。

さて、二者択一の話に戻りますが、家内とも何度も相談し、悩んだ挙句私は後者を選びました。それは会社を辞めて田舎に戻る事です。

翌週のある日、私は退職願を書き、上司であるI係長に持っていきました。 

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