幼稚園時代
すごーい昔の話。昭和40年ころかな。
何と、私が幼稚園生のころの話です。
当時、私は地元の寺が経営する幼稚園に通っていました。
ありがちなパターンですね。
幼稚園では友達もできて充実した日々を送っていたような気がします。
で、私の性分故なのか、この年齢でもちゃんと好きな娘が出来てしまうものですね。
その娘は背が高くて所謂「おしゃま」でしっかりした感じの娘でした。
なので、一緒に遊ぶ時等は幼いながらも心が躍ったものです。
さて、話ですが、ある日、園児全員で遠足的社会科見学に出かけた時のこと。
場所は福島市にあるヤクルト工場でした。
保母さん引率の元、社員さんが色んな設備の説明をしてくれて、
お約束で、最後に一人一人にヤクルトをふるまってくれました。
ニコニコの私たちは大きなテーブルに一人一人にと並んだヤクルトを椅子に座って
お行儀よくいただこうとしていました。
しかし、その時不幸は起こった。
なんと、私の大好きな彼女は有ろうことかヤクルトを机にひっくり返してしまったのです。
無慈悲にも見る見るうちに机一面に広がるヤクルトの黄色い液体たちよ。
その時の彼女は自分の失敗の後悔と恥ずかしさで今にも泣きだしそうでした。
しかし、そこに、保母の鶴の一声が入ったぁ!
「吸え!」「早く吸えぃ!」
彼女は泣きだす暇もなく慌ててその指示に従い、唇を尖らせて机にこぼれ切った黄色い液体を
電動吸引機よろしく、ずずずーと全てきれいに吸い込んだのでした。
私は愕然とした。
普段は優しい保母さんのはずなのに。「大丈夫?」とは程遠い、間髪入れずに飛んできた鋭い命令口調。
そして、図らずも遭遇してしまった大好きだった彼女の失態という新たな一面。
この一部始終がとてもショックで、今でいえば正にドン引き状態。
私はこの時、人にはいろいろな側面があるのだと言う事を幼いながらにも学んだものです。
今では衛生上も考えられないような、この時代にしかありえないお話でした。