夏休み行燈大会
小学生の頃、私の地域では夏休みになると行燈大会が開催されます。
行燈大会とは、和紙のような薄い紙に地元の小学生が思い思いの絵や漫画を描いて行燈に張り付けたものを
近所の神社の参道付近の路地にロープを張ってぶら下げるという行事。
夜になると、ロウソクが灯され、ずらりと並べられた行燈は中々の迫力です。
そして、行燈を見終わった帰り道では、母と兄弟と、ラーメン屋さんで、かき氷を食べるというのが恒例でした。
この夏の日の思い出は、私の数少ない家族との楽しい思い出です。
当時は私も漫画を描いて参加したものです。実は、私は漫画が得意で、クラスでも高く評価されていました。
夏休みのある日、行燈大会の為に私は漫画を描いていました。すると、横から口を出すのは姉です。
「あーあ、そこそう描く?」とか「全然ダメ」とか。
仕方が有りません。姉は漫画家になりたくて同人誌に投稿するほどの所謂「漫画少女」だったのです。
私なんかより上手いのは当然です。結局、私から筆を取り返して全部自分で描いてしまうのです。
高校生の姉ですから、小学生の作品にしては超絶上手いのは当然です。
しかし、姉の強引なこの行為は実は私は心の中では非常に嬉しかったのです。
何故ならば、行燈大会の当日は私の行燈に人だかりが出来るのです。
「上手ぁーい」「上手!どこの子?」と大人達は大絶賛。
「あー4組の國分君だ。あの子上手いんだって」。その一部始終を遠目に見てウヒヒとほくそ笑む私。
私も姉ほどではありませんが漫画が上手かったので、ばれる事はありませんでした。プライドなど有りません。
当然、翌年から毎回、姉の作品が行燈大会を賑わしたのは言うまでもありません。
姉への数少ない感謝の一幕。