㉟やっと田舎に帰れる その二
I係長の恩情
退職を決意した私は退職願をI係長に提出しました。同時に、私は色々な思いをすべて正直に話しました。
そして、全ての話を聞き終わった後に、係長は私にこう言いました。「今までのキャリアが無駄になるから退職は進めない。けど、田舎に帰りたいのも分かった。もしかしたら営業なら帰れるかもしれないぞ」と。
当時、FXには社員と人事直通のラインが設けられており、直接人事課に営業への転向を直訴してそれが認められれば赴任地の希望は最優先で考慮されるというものでした。つまり、営業なら福島に帰れると言う事です。
しかし、私は一抹の不安が拭いきれませんでした。それは、コピー機のカスタマーエンジニアから東京に転勤でワークステーションのエンジニアに転向し、その後、生保システムのプロジェクトに転向し、今度は全く畑違いの営業職になるわけですから。また一から出直しなのかという思いが侘しさと虚しさを呼びこみます。
でも、福島に帰れるのならとの思いで、私は営業職への転向を決意しました。その後、人事に直訴し、後日人事面接を受けることとなりました。
しかし、この時の私は、I係長の思いなど知る由も有りませんでした。